轻松读懂日语经典作品
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しんらん
親鸞
吉川 英治
「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页
「そうだ」もう西仏はそばにいなかった。――何を感じたか、彼もまた、まっしぐらに西仏の後から赤い空の下を走って行った。
二
場所が小高い丘であるし、正面海の風をうけるので、国府の代官所と年景の住居をくるめたそこの一廓は、焔々と、紅蓮のほしいままな勢いにまかされていた。
「――魔火じゃ」
「どうして、火の気もない、御文書庫から?」と、役人や小者たちも、手をこまねいて、猛火のすごい勢いに、気をのまれたかのように、傍観していた。
火事だっ――と誰かさけんだ時は、もう役所の奥の書類のつまっている一棟が完全に火の中にあったのである。原因のわからない火だった。
夜なので、役所のほうには、三、四人の小役人が宿直をしていたに過ぎなかった。丘の東の麓に、代官所の部下がだいぶ住んでいるが、そこへも火がかぶるので、めいめいが、わが家のことや家族の処置にいっぱいで、誰も、ここへは駈けつけて来ない。
国府の領民も、初めは、
(たいへんだ)と、驚いたが、すぐ、
(なんじゃ、代官所か)と、すぐ冷静になってしまった。
(日ごろ、わしらを、牛か馬のように思うて、苛税を取り立てた酬いじゃ、あの赤い火は、代官所を呪うている貧しい百姓たちの思いが燃えるのじゃ、常々、威張りくさってばかりいる代官の顔を笑うて見てやれ)そういう感情が、領民の誰にもあった、口にいう