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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页

青空文庫

――明かにある。――だが、そう気軽に曲ってゆけない素質が自分につよいだけだ――と、複雑な自己を他人のように内蔵助は今も見ている。

だが――だが――散り際が、いとおしい。

どっちにしても、短い生涯とおもう。可惜、醜いものにする迄もない。考えれば自分というものも、ぽつんと、生れて消えるだけの一個ではないはずだ。先祖もある、これからの子孫もある。いわば、自分は、鎖の中の一つの鐶だ、ここで、錆びてはならないと思う。

『いや、それは小さい』

――目をとじて、彼は心の隅々までを、総ざらいしていた。すると、忽然、彼自身にすら驚かれるような本心が、大きく彼の意識にのぼった。なるほど、おれには元々、そういう叛骨があったのだと思う。それがおれを、こうさせている。――叛骨は、叛骨も無さそうな人間のうちに、かえって図太くひそんでいるものらしい。

素朴な武士の家庭に生れ、ただ武士道に生きてゆく。それを彼は不幸とはしていない、不合理、不自然なる社会の介在とも思わない。けれど、ほとほと、この元禄の世代と、一般の世のあり方には、不満と欝屈を禁じ得なかった。人間として、無関心でいられない「非人道」