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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
首受書
『ハハハハ、こんな話を、吉良どのは、首桶の中で、どんな顔して聞いているだろうな』
と、二人とも笑い合った。
首受書
石獅も一呑も、禅寺できたえられた元気な若僧なので、最前からの吉良家の態度に、むっとした顔つきであった。
ここの混雑と手不足は分りきっているが、火鉢一つに茶を一杯出したきりで、挨拶に出た老臣も、万昌寺の僧も、首桶を持って奥へ引っ込んだきり、いつ迄たっても、顔を出さないのである。
帰りは遠いのに、夜は更けるし、脚も坐り痺れて来て、
『おい石獅、もう一度、催促してみようか』
『首の受取書をくれと云ったので、弱っておるのだろう』
『いくら弱っても、こちらも大事な使者として来たのだから、受取書をもらわずには帰れない』
『ただの品物と違って、主人の首の受取は、いくら意気地のないここの家臣でも、武家として前例があるまいから、書くに弱っているに違いない。……手をたたいて茶をくれと云ってみよう』
『茶はまだ、二人共、飲みほしてないじゃないか』
『先刻から、頻りと喉は渇いておるのだが、ここの部屋へ坐ったとたんに、ぷーんと嫌なにおいが鼻をついたので、気持が悪くて飲む気にならぬ』