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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
曾我舞
曾我舞
浪人するといつの間にか、やはり浪人くさくなるものだと、堀部安兵衛は笑いながら、唯七に云った。
『そうさ――そう云われてみると、誰もが、やはり変ったな』
『拙者などは、殊にな』
『ならぬお人は山科の大夫だけじゃ』
『なりようがあるまい。武士のたましいが、まるごと失せては』
江戸表から京都へ上って来た安兵衛は、大高源吾の浪宅にわらじを脱いでいたが、いることは、今日び珍らしいぐらいであった。
大阪の天満に、原惣右衛門をたずね、不破数右衛門に会い、中村勘助をたずね、潮田又之丞をさがし、東奔西走、陽焦けと汗にまみれていた。
山科へは、ちょっと顔を出したきり、以後、同志との話にも、内蔵助のくの字も云わなかった。腹の底で、すでに安兵衛は見限りをつけているらしかった。内蔵助の乱行ぶりは、江戸の噂以上である。語るに足らない人間に、期待をもって、今日まで引きずられて来た愚かさを、思い出すのもいや、口に出すのは、猶お忌々しかった。
一挙即行。
安兵衛の決意には、まず、原、不破が、
『それよ』
と、ばかりすぐ応じた。
武林、中村、もとより異存がない。岡野九十郎も、これに結ぶ。