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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
清掃
大手の刎橋の朽ちた部分を修繕しているのだ。二の丸の堤には、草摘み女の菅笠が沢山にたかっている。松には庭師が登っていた。道路には足軽が指図して箒目を立てている。
城内の整理は終った。清掃もやがてすむ。
備えつけの武器什器、民政の諸帳簿類から国絵図、すべて目録にして、きちんと、置くべき所へ置いて、公儀の使者を待っていた。
幕府の命をうけて、城受取りの副使として赤穂の旅舎に着いている荒木十左衛門と榊原采女の二人は、正式の明渡しが行われる前の日、下検分として、城内を見て廻った。
本丸、二の丸の広い区域を巡見して、その人々の白い足袋の裏は汚れもしなかった。大廊下は、照りかがやいていた。武器の飾りは見事だった。郷帳、塩田絵図、年貢台帳、一目でわかるように備えてある。
『粗茶を一服さしあげとう存ずるが』
内蔵助から申し入れると、
『左様か』
使者たちは、鷹揚に導かれた。
そこは、内匠頭の世にいた頃の居間だった。茶のかおりが漂うと、居ならぶ藩士たちの瞼には、主君のすがたを思い泛べずにはいられなかった。
その時、内蔵助は両使へ向って平伏しながら、
『主君内匠頭儀、不調法に依って、城地お召上げの上命、謹んでおうけ仕りまする。