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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
躍起組
上野介は、初めて、笑った。
『飼主のない、痩せ犬どもに、何ができる。どう働いた所で、禄が上るではなし、おのれの首が飛ぶだけの事。川風にふかれて歩いているうちに、頭が冷めて、馬鹿馬鹿しさに気づいたのじゃよ』――と。
だが、
程なく彼の船と、警固の艀とが、両国下の横堀へ入ると、そこの一つ目橋の上に、先刻の十一名が欄干に姿を並べていた。そして、
(来たな)
と、見ると、ばらばらと橋を越えて行く様子――
ちょうど、一つ目と二つ目橋の間にあたる松坂町の裏河岸のあたりに、その十一名が、ずらりと影を揃えて、立ち塞がった。
躍起組
それよりも前。――まだ西陽の照りつけている頃だった。
大汗をかきながら、せかせかと、胸に扇の風を入れながら、
『ゆるせ』
と、箔屋町の蒲焼屋「宮戸川」の門口へ入って来た浪士がある、堀部安兵衛だった。
『いらっしゃいまし』
『見えておるか、一同は』
『お待ちかねでございます』
二階へ上る。
中庭の女竹の葉が、裏の欄干越しに青々とうごいている。
もうそこの一室で、十数名の話し声がする。
奥田、片岡、赤埴、村松父子などである、武林唯七、矢田五郎右衛門などもいる。