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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页

青空文庫

雨娘

道にすこし、霜が白くこぼれていた。頻りと、千鳥が沖の闇で啼いていた。

雨娘

翌る日――十二月の三日だった。

本所林町の隠れ家に、きょうは堀部安兵衛が独りだった。

硯箱を寄せ、何か覚え書らしいものへ、符牒を印している。

約半年のあいだに、ぼつぼつ此処へ運ばれていた武器の覚えである。元より明瞭には書いてないが、安兵衛にだけ読めることは勿論である。

一、槍十二本。長刀ふた振。――まさかり二梃。――弓、半弓二張ずつ。

又、べつの項目へ。

竹ばしご、玄能、鉄てこ、木てこ。

それから――

大鋸二枚

鎹六十本

取鍵十六筋

などとも誌してある。ほかに、

松明、人数ほど

がんどう提灯 二

鉦      一

小笛、人数ほど

『……はてな、小笛は、あの中へ入れておいたかしら』

縁側へ出て、履物へ足を下ろした。汚ない裏の空地に、菜漬樽や炭俵などの見えている納屋がある。中へ入って、安兵衛は菰のかぶせてある大きな張籠の中を検めていた。

『――お留守か』

すると、表のほうでこう訪れる声だ。

あわてて、そこを閉め、

『誰だ』

『わしじゃ』

京都の呉服問屋の旦那衆となりすましている大高源吾のすがたが、格子の外にちらりと見えたので、