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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页

青空文庫

千鳥講

『おう、お久しいことで』

『いつぞやは』

などと門口でぶつかる挨拶も、みな何気ない。

茶屋でも、疑わなかった。

こういう寄合いは、珍しくないのだ。――席が定まる、雑談が弾む、茶を呼ぶ。

頃を計って、

『さて――』

内蔵助は、一同へ向って、膝をあらためた。

『お集まりを願ったのは、ほかでもないが、例の日も、何うやら近日に迫ってきたように存ぜられる。いわゆる自ら天機熟すというものでもござろうか。――就いては、元よりわれ等は一心同体。今更、異心のあろう道理はなけれど、この際、更に神文のちかいを新たにいたして、一層、結束を固くすることは無意義であるまいと思われる。御異存がなければ、血判をいただき申したい』

そう云って、

『――吉田氏』

と、眼くばせる。

吉田忠左衛門と原惣右衛門の二人が、ゆうべから心をこめて書いて来た起誓文――それを忠左衛門が懐中から出し、惣右衛門の手へわたして、

『御苦労ながら』

と、云った。

『承知いたしました』

と、惣右衛門は、姿勢をただし、

『読みあげます』

四箇条になっていた。

その第一条には――

(冷光院殿さま御尊讐、吉良上野介どの討取るべき志これ有る侍共、申し合せ候処――)