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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页

青空文庫

人間主張

金、虚名、貪慾、無節操、乱倫、阿諛、奸争、佞策、何でも、利にしたがって、嗅覚の漁りに奔り、ばかばかしい人間の理想などというものを、極端にまで、軽蔑し合った。

人間主張

だが、もちろん、以上のそれが、人間の全部ではない。

やはり、人間は人間であろうとして、依然、畜生以上を矜持している人間もある。当然、ふたいろの人種が、二潮流をここに作った。寒潮魚と、暖潮魚のように、それは一つ海に棲んでも、一つには交り得ないものだった。

たとえば。――と、内蔵助は、こんどの事件を、まったく、他人の事として思う。

浅野内匠頭と、吉良上野介との、違いなども、その不幸は、この時潮が、いつか招くべきものを、たまたま二人が、与えられた舞台と機会をもって、しかも曠の式日に、曠の扮装をもって、演じてしまった宿命にすぎない。内匠頭ならずとも、いつかは一度、誰かが、やらずには済まなかったであろう。

上野介が、主人への仕方や、彼の日常だの、彼の生活信条も、内蔵助には、よくわかる。決して、それは、世間外ずれな非常識というほどなものではない。むしろ彼の考え方には、彼と同意の味方がずいぶん多いであろう。