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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
告げよ瓶花
四十六名の者、切腹!
告げよ瓶花
『……だめだったか』
伝右衛門は、詰所から起つ勇気も、口をきく気力も、喪失してしまった。――同時に、
『偉いっ。――ア、やはり偉いっ』
腹の底から呻いて云った。
――思い合せてみると、正月は式日が多い。二月一日は又、日光のお鏡開き、これも凶を忌む日である。――で、それが過ぎれば、処決の日は間もあるまいと――自分など自由な身よりも先に洞察して、別れの酒を酌んでいたものとみえる。
道理で、この二、三日は、各が手紙を多く書いていた。何となく身仕舞のふうも見えてあった。
――だが、そこまで、深く先を観てい、覚悟もしている人々にしても、伝右衛門は、自分の口から、幕府の処決を、一同に云えなかった。
越中守もがっかりして奥へ引籠っている。浪士達へは、伝えなければならない。――今朝はもう三日となった。後一日か二日――永遠にあの笑い声も、あの各※(二の字点、1-2-22)の風貌も地上から消されるのだ。
伝右衛門は、思い余って、三日の朝、上之間の床間へ、花を挿けた。
罪人の居間へ花を挿ける。
――この謎は、あの鋭敏な人々である、言わずとも解くであろう。