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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页

青空文庫

酔大尽

(大夫は近頃、ちと前とは人間がお変りになって来たのじゃないか)

などと、同志の間でも、云い交していた。

(あれもよかろう……)

と、小野寺十内とか、寺井玄渓とか、老人連は、むしろ吾が意を得たりといわないばかりに笑って見ていた。

然し、大高源吾とか、富森助右衛門とか、潔癖家で、そして若い者は、

(家は普請する、傾城買いはする、それで、復讐の相談といえば、いつも煮え切った試しがない。とんと、大夫の肚はわけがわからぬ)

彼の乱行を見て、慨然と、時には不満を洩らす者もあった――潮田、武林、幸右衛門など、勿論、その派の者だったので、口もきかずに、苦り切って、艫の一と所に、顔を反向け合っていた。

――しかも、内蔵助は、先頃の三月十四日が、ちょうど亡君の一周忌にあたるので、その法要を営むために、赤穂の華岳寺へ遺臣一同を代表して帰国し、今は、その帰り途なのではないか。

何処で、その旅装を解いたのだろう。まだ、山科にいる家族も、京都の誰も知らぬ間に、旅装はどこかへ解きすてて、黒縮緬の羽織に、利休茶のやわらか着衣、けばけばしく金のかかった帯や持物を身につけて、ぞろりと、納まり返っているではないか。