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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页

青空文庫

墨絵

『いやはや。話せねえ男だ。自分に云われた謎を、御老中の所まで問い合せにゆくとは、呆れ返った馬鹿者だ。それとも、此方の無愛想に、へそを曲げて、わざと、上野介を陥しいれる為に申し出たことか。――ちッ。田舎者めい!』

かれが、感情まかせな呟きを吐くときは、ひどく、江戸人特有なマキ舌が語気に交じった。ひとを罵るのにもよく“浅黄裏”だの“勤番者”だのと云うくせがある。要するに、それは彼が、彼自身を洗練された都会人としている誇りからくるものだった。

墨絵

小砂利を掃くお六尺も、お賄所の門をくぐる出入商人も、すべて、新しい法被を着ていた。

饗応役の家臣たちは勿論のこと、君侯生涯の大命である。肌着には穢れのない晒布を裁ち、腹巻には天の加護を祈って、神札を秘めている者もあった。

『勅使、柳原大納言さま、院使、高野中納言、清閑寺前大納言の御三卿、ただ今、おつつがなく、品川までお着き遊ばされました。高輪にて、御少憩にございますれば、ほどなく、これへ御着になられましょう』

清掃された伝奏屋敷の門へ、のし目裃の騎馬武士が、こう先触れを齎した十一日の朝。

暁方から、そこに、詰めきって、各※(二の字点、1-2-22)、持ち役の場所に緊張していた浅野家の家臣たちは、