轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页

青空文庫

秋の残り香

『おお』

と、声を弾ませた。

郡兵衛も、その声に、顔を向けて、

『あっ……。これは』

と、立ちどまった。

秋の残り香

『珍しい所で会ったの。どう召された、その後は?』

と、中間と娘をのこして、その武家は寄って来た。

『御無沙汰仕りました。いつも、お変りもなく』

『わしは、この通りだ。然し、尊公は、えらい目に遭ったのう。破格な高禄で、浅野家へ招かれたは、今思えば、却って、不幸じゃった。小笠原家に居れば何のこともなかったのに。さてさて、人間の吉凶はわからぬものじゃて。――お小夜も、あの大変以来、噂のみして、案じて居ったところじゃ』

お小夜というのがその娘であろう、父の側から挨拶をする。話は、頻りと弾むらしいのである、相当な身分の者らしいし、娘も縹緻のよい方だった。

先に、ぶらぶらと、ゆるい足どりで歩いていた堀部と奥田は、容易に郡兵衛が来ないので、路傍へ寄って佇立んでいた。

やっと、来たと思うと、郡兵衛は、

『いや、弱ったよ』

と云った。然し、鶴ヶ岡からむッつり沈みがちだった顔いろは、明るく解れていて、

『――話し好きな年老でな、それに、五、六年ほど、無音のまま会わなかったのだから、離さぬのだ。