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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页

青空文庫

笑えぬ二人

(十郎左は美い男――)

と誰でも云う。

彼こそ元禄型の美男と云える人だろう。やや面長であって、眉は漆を引いたようだし、丹唇白皙だった。痩せ形のほうではあるが、決して、不健康なそれではない。

その美貌と端麗とを持ちながら、何より好ましいことは、謹厳なのだ。無口で、しかも、情熱家である。親思いということも、同志の老人達がよく口にのぼせる所であった。

『初耳だな、十郎左。何かよい吉左右でも近いうちに探り取れる的があるのか』

側にいた武林唯七がそう云って、頻りと、その何んな的であるかを、他の者も口々に訊ねたが、

『まだ申し上げる時ではございませぬ』

十郎左は、含羞むような口吻で、うつ向いてしまった。

『そういう的があるなら、一日もはやく、願いたいものだ』

『深慮な十郎左のことだから、何かやるだろう。……ははあ、すこし読めてきた、わかったぞ』

と、前原伊助が、何か思い出したように、こう云って薄ら笑いを送った。

『十郎左、申してみようか』

『いや、およしください』

『云いたいな、悪い話じゃなし――』

『もう、そんな事は』

伊助に謎のようなことを云われると、十郎左は、処女みたいに顔を紅くした。