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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
淀川往来
摂州萱野村へ帰郷している三平からは、その後、同志への音沙汰がふッつり絶えていた。おとなしい鬱気な青年ではあるが、情熱家だった。去年主家の凶変の折に、早打駕の一番使者として、赤穂に江戸の第一報を齎したのは彼だった。それ以来、あまり健康の勝れない様子なので、
(すこし、故郷へ行って、養生をしては何うか)
と、内蔵助もすすめ、友人達も気づかっていたが、
(なに、大した事はない)
と、三平はつい先頃まで、何かと、地の理に明るいこの京阪の間を奔走して、同志の間の重宝者となっていた。
所が、この一月中旬、吉田忠左衛門と近松勘六が、江戸表へ下るについて、萱野三平も同行する事になり、或は、復讐の実を挙げるまで、その儘、江戸へ留まることになるかもしれない話なので、三平は、いちど、郷里へ行って、それとなく、両親にも別れを告げて来たいというので、
(それはよい、是非、参られい。一両日の延引は、都合を変えても待って居よう)
忠左衛門や勘六もすすめて、摂州へ立たせたのである。その儘なのだ。一月以来、音も沙汰もなくなってしまった。
或者は、
(三平も、高田郡兵衛流に、うまく、加盟から外れたのだろう)