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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页

青空文庫

落葉百態

勅使に対しては、当然そうなければならない幕府の裁断は裁断として、他にまた、何等かの活路をつけて、御一命だけは、真際にお救いがあるかも知れない――。

(そんな事はあり得るわけがない。御助命の余地があるくらいなら、即日切腹などという異例な裁断が下される筈もないのだ)

と云うことは、誰にもまたすぐ考えられて来るのであったが、そうと口に出す者はなかったし、各も、自分で自分の常識を打ち消して迄、唯、

(もしや? ……)

と、その一縷の希望へ祷りをこめて、待ちかねていた第二の使者だった。

落葉百態

程なく表方から戻って来た内蔵助と九郎兵衛の顔いろをながめて、一同は、途端に、はっと不吉なとどめに胸を刺し貫かれた。

(御切腹だな――)

ふしぎなほど冷やかな一瞬が諸士の硬直した顔面をながれ、ただ幾つもの燭だけが、大きな息をついている。

果して、内蔵助の口から読み聞かせられた書面と、使者によって伝えられてきた第二の報告は、人々の直感のとおり、赤穂一藩の運命を、絶望の闇へ突墜すものであった。

自ら、うなだれて聞き入っている二百有余の頭の上に、内蔵助の縷々と述べる報告のことばが終ると、今度は、勃然として、