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しんらん
親鸞
吉川 英治
「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页
三
待ちかまえている所へ、毛皮の胴着に、野刀を佩いた荒くれ男が四、五人、息をせいて、
「弁円殿、ここにか」
「待ちかねていた。柿岡は」
「説教が終って、もう立った。念のため、途中まで見えがくれに尾行ながら来たのだ。今しも、この先の渓間を、野馬に乗って参るのが親鸞」
「なに、もう下の渓道まで来たと? ……して、親鸞の身を守る弟子どもは、五人か、十人か」
「一人」
「えっ、一人?」
「生信房というて、元、京都から中国九州にまでわたって、悪名をとどろかせた天城四郎が成れの果――今では頭をまるめている弟子坊主が、親鸞の手綱を取って、毎日、ここを越えて柿岡まで通うている」
「あっ……四郎がか」と、播磨公弁円は、遠い過去の彼を思い、また、最後に四郎とわかれた加茂川堤の時の宿怨を胸に新たにした。
親鸞といい――その四郎の生信房といい――共に弁円の心頭をあおる毒炎の中の仇敵である。その怨みのふかい人間が、共に、連れ立って来るというのも、何か、今日という鬱懐をはらす日の特異な宿命のように考えられる。
「ウーム、そうか」弁円は太くうめいて、もう体を武者ぶるいが走ってならないように、手に持っていた半弓を、ぶん、ぶん、と二、三遍弦鳴りを試みながら、