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しんらん
親鸞
吉川 英治
「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页
「どうじゃろ」と、親鸞は、領主の大内国時へ謀った。
「その平次郎とやらいう者、なんとか、このたびだけ、免じてやるわけにはなりませぬかの」国時は、意外な顔して、
「せっかくながら、今も家来どもの怠慢を、叱っておったほどの者でござる。上人のご広徳をもってしても、救われがたい無頼の徒、お聞きながしてくだされい」
「だがの……」親鸞は、未練のように、
「招いても、縁のない衆生さえあるに、この伽藍の造営に、柱の穴一つ穿った者でも、わしの眼から見ると、まことに浅からぬ仏縁のある者」
「悪を懲らし、罰を明らかにせねば国守の法も立ちませぬ」
「ごもっともでござる」親鸞は、国時のことばを大きく肯定しながら、すぐにまた、
「しかし、国法のこころは、人を罰するをもって、最高なりとはせぬものでおざる、罰法は元、それによって、兇悪の徒も真の道に生き直るための罰でなければなりません。――この御堂が、真の生きた、伽藍であるならば、此堂をめぐって、造営に働く人たちも、いつか必ず仏縁のご庇護によって、精神のうちに、弥陀の慈光をうけねばならぬはずと存じます。……宥しておやりなされ、親鸞に免じて、お聞き届け願わしゅうござる」