轻松读懂日语经典作品
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しんらん
親鸞
吉川 英治
「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页
八
若い旅僧の姿が下の方に見えた。笠に手をかけながらその若い僧は喘いで上ってきた。
「もしっ、お山の衆」
「おう、なんだ」
「おうかがいいたしますが、大乗院はまだ峰の方でしょうか」
「大乗院なら横川の飯室谷だ。この渓流にそうて、もっと下る、そして対う岸へ渡る。こんな方へ来ては来過ぎているのだ」若僧はそう教えられて深い渓谷の道をかなしそうに振向いた。雪解けの赤い濁流が、樹々の間に奔濤をあげて鳴っていた。
「ありがとうございました」やむなく若僧は岩にすがってまた谷の方へ降りて行くのである。綿のように疲れているらしいその足どりを見送って、提婆は、
「あぶないぞッ……」と注意していた。
まったくこの谷に馴れない者には危険な瀬や崖ばかりであった。対岸へ越えるにしても、橋もなし、岩伝いに行く頼りもない。若僧は、怖ろしい激流の形相をながめたまま、嘆息をついていた。そして、休んでは下流へ辿ってゆく。雪で折れた朽ち木に道を塞がれ、そこでも、茫然と、気がくじけてしまう。
心細さはそればかりではなかった。沢の樹々の間はもうほのぐらく暮色が迫っている。そして、四明の山ふところから飛んでくる氷った雪か、また灰色の雲がこぼしてゆく霰か、白いものが、小紋のように、一しきり音をさせて沢へ落ちてきた。