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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

五

――どうなることか。

興味と不安とを併せて抱きながら、自分たちも、余波をうけて、人の怒濤に押しつけられていた。

すると、ひしめきあっている群集の後ろから、背のすぐれた大坊主と肉のかっちりと緊まった四十前後の痩せがちの僧とが、

「退け」

「邪魔だ」と、弥次馬を掻き分け掻き分けして、一心に、輦のほうへ近づこうとして焦っていた。

――誰か、熱鬧の人渦のうちから、その時綽空の輦を眼がけて、

「――堕落僧っ」と、石を投げた者がある。

一人の弥次馬が、暴行に率先して、悪戯の範を垂れると、火がつくように浮かされている人間の渦が、いちどに、

「わあっ」と、喝采をあげて、

「外道めっ――」とまた、石を抛り投げた。

ばらばらっと、牛の草鞋だの、棒切れなどが、軌や、簾へ向って、暴風みたいに飛んできた。

だらだらと、こめかみに、汗をながして弥次馬を掻き分けてきた大坊主と、もう一名の僧とは、

「ややや」と立ち淀みながら、法衣の袖を腕高くからげて、

「この慮外者めが」痩せた僧のほうが、側に、小石を拾っている凡下の頭へごつんと鉄拳を与えると、大坊主はまた、弥次馬の蔭にかくれて、今しも、輦へ向って、物騒な瓦の欠らを投げつけようとしているどこかの法師の顔を見つけて、