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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

六

悪人もこい、女人も参り給え。

また、在家の方々よ。従来の聖道自力の僧は、やたらに自分にも行いがたい禁慾を強いる。いたずらに、物絶ちをもって、清浄とし、形式にばかり囚われて、実はかえって、裏には大きな矛盾を秘しているようなことになる。

浄土門の易行道では、そういう似非聖の真似をもっとも嫌う。ありの相のままを清浄とする。

肉もよし、酒もよし。女人を男性が持つ、女人が男性を持つ。これも自然の人間の相のままを尊ぶ。おのずからそこには男女の道というものがある。道を外さぬほどならばよい。

在家の方々よ。それでよろしいのだ。

職業も、他の生活も、そのありのままで、お身たちは立派に「往生」することができる。菩提にいたることができる、聖たることができる。

むずかしいことではないのだ。それには、ただ念仏を仰っしゃればよい。それも、勤めを苦にして称えることはない。思い出したらいうがよい。一日に一遍でも、また、申したくなったら千遍でも、なお万遍でも。

烏帽子打ちが職業であったら烏帽子を打ちながらいってもよい、弓師であったら弓を張りながらいうもよい、眠りの前にふといいたくなったら一声でも胸のうちでいうもよい、茶碗を持つ時、何かおのずから称えたくなったら箸を持ちつつ胸のうちでつぶやくのも立派な行である。