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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

八

つねづね、よう教えてありますのに、なぜ、一人で外へなど出ましたか」と、叱った。

八

「あ、もし」介はあわてて、吉光の前のことばを遮った。

「――おしかり遊ばすな。和子様のは、世間のいたずら童が、飛びまわるのとは違いまする」

「でも、こういう時には」

「ごもっともです。けれど、介のぞんじますには、おそらく、和子様は、お父君のお病気に、小さな胸をおいためあそばして、それを、お祈りしていたのではないかと思われます」

「ほ……どうして?」

「介が、諸方をお探しして行きますと、いつか、和子様をおぶって粘土を取りに参りました丘の蔭にこう、坐っておいであそばしました」介は、庭へ坐って、十八公麿がしていたとおりに真似をして合掌した。

そして、三体の弥陀如来の像を作っていたこと、一心に何か祈念していたこと、それがとても幼い者の振舞とは思われないほど端厳な居ずまいであったことなど、目撃したままを、つぶさに話した。

「まあ……和子が……」母の眸には、涙がいっぱいで、それが笑顔にかわるとたんに、ぽろりと、白いすじが頬に光った。

「では……そなたは、お父君のおいたつきが癒るようにと、その小さい手で、御仏の像を作っていたのですか。