轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页

青空文庫

浅野内匠頭

七ツちがい

浅野内匠頭

七ツちがい

春の生理をみなぎらした川筋の満潮が、石垣の蠣の一つ一つへ、ひたひたと接吻に似た音をひそめている。鉄砲洲築地の浅野家の上屋敷は、ぐるりと川に添っていた。ゆるい一風ごとに、塀の紅梅や柳をこえて、大川口の海の香は、銀襖や絵襖などの、間毎間毎まで、いっぱいに忍びこんで来る。

すぐ塀一重、外には、櫓の音が聞えるし、大廂には、海鳥の白い糞がよく落ちたりする。

『赤穂の浜も、今頃は、さだめし汐干や船遊びに、賑うて居るであろ』

内匠頭は、脇息から、空を見ていた。いや、遠い国許の、塩焼く浜の煙を、思い出している眸であった。

二十五、六歳かと思われる上品な女性のすがたが、次の間から半分見える。夫人であろう。風呂先で囲った茶釜の前に、端麗に坐っていた。茄子色の茶帛紗に名器をのせ、やがて楚々と歩んで、内匠頭の前へ茶わんを置いた。そして彼の視線と共に、廂越しの碧い空に見入った。

『江戸では、江戸の春と、みな自慢でございますが、お国表の事をお思い遊ばすと、やはり懐しゅうて、赤穂の御本丸が、恋しゅうおなりでございましょう』

『それはもう、何んな所に、住まうよりは』