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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
『それで返しに来られたのか』
『まだこれから、十数名の家を歩かなければならん。……いや永い間、ああだのこうだの、お互に馬鹿な日をつぶしたものさ』
『怪しからぬ話だ!』
六郎左衛門は、自分の連判を袂へ突っ込むと、苦りきって、
『人の血判を、ただ掻き集めて、それだけの口上で突っ返すなど。――多分はこんな事じゃろうと思っていたが、余りにも、馬鹿げておる』
『本来は、内蔵助殿が、連判の全員をお招きされて、斯くかくと、経緯をお話しあった上で、一言、御自身の不徳と詫びて下されればよいのだが、円山の会議の折も、人は集まらぬし、又大石殿も、今では方々に会う事も、どうも面目なげに窺われるので……』
『お帰りの上は、大夫に伝えて下されい。――六郎左衛門、落胆いたしたと』
『承知いたしました』
苦笑をかくしながら、二人は匆々に、百日紅の門を出て、
『貝賀。こうして歩いてみると、人間の心というものは、実におもしろいな。……裏と表、双つ鏡で見るようだ』
彼の道此の道
『――次は何処だ』
『北野におる灰方藤兵衛』
『それは、住居がよく分っているからいい。だが、まだ大分残っておるか』
『十七、八名はあろう』