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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
と、欣び合う。
京都を立つ前に、上方で整えた討入の武器、服装、その他の品は、引っ越し荷物に見せかけて、船上げをすると、これは吉良家の邸に近い隠れ家へおく必要があるので、堀部弥兵衛老人と、奥田孫太夫のふたりに任せて、隠れ家へ運んでおいた。
――こう着々と、手筈は進んでいるのである。だが、いっこう進まない問題が、吉良邸の内部のもようと、上野介その人の動静が、皆目、外部から分らないという問題であった。
『――年を越しては』
と、堀部安兵衛などは、いとど焦躁る。
なぜならば、いくら巧妙に名を変え姿をやつしていても、江戸の事だ、五十幾名の同志が潜伏しているこの行動がいつまで世上に知れずにいる筈はない。
それもあるし、又、もう一つの理由としては、もうこれ以上の経済力がない。すでに、京都や他の地方からこの江戸表へ同志が出て来るにも、各※(二の字点、1-2-22)、惨憺たる路銀の苦心をして来たものだった。家財は固より持物を売り尽し、まったく身一つになっている者が大部分だし、又、生活力のない者には、多少余裕のあった者から融通しているので、これも忽ち枯渇してしまう有様なのだ。