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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页

青空文庫

『読んで聞かせて下さい』

と、云った。

何気なく、封書の差出人の名を見ると、

松坂町吉良様御門内

斎藤宮内

――やっ? 勘平はあやうく声をもらすところだった。斎藤宮内! 正しくこれは吉良家の家老である。彼は、手がふるえた。何か、眼のつぶれるような秘宝でも手に持たせられたような気持で、

『うむ……。これですか』

『はい』

『いつ来たお手紙で』

『今しがた』

日を思うと――今日は十二月十日である。

勘平は胸の躍るのを抑えながら封を切った。文言は簡単である。

当月十四日

夜会催さるべく候間

他よりの先約容赦あるべく候

こう読み聞かせると、盲阿弥はうなずいて、

『ああ、そうですか』

と、この沙門には、何の問題でもないらしい。

『返事を出すのでしょう』

『ついでに、お願いできましょうか』

『おやすい事』

と、勘平は、すぐ、盲阿弥の旨のまま、委細承知――という文意を簡略に認めてやった。

ちょうど、下男も出ていないらしいので、勘平は、

『いっその事、私が、ちょっと吉良様まで届けてあげよう』

『滅相もない』

と、盲阿弥は首を振って、

『御筆労を願ったり、下男がわりの使走りなど願っては』