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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页

青空文庫

梶川懺悔

梶川懺悔

時計の間には、ひっきり無しに、表役人が、緊張した顔を持って、出入りしていた。

阿部豊後守を初め、土屋、小笠原、稲葉の諸大老以下、若年寄、大目付たちの歴々が、膝をかためて、厳粛に詰めあっている。

午さがりの空は、うす寒く曇って、吹上苑をつつむ桜花の蔭に、チチ、チチ、と小禽の音はあるが、何となく浮いていない。

勅答の式を済ました三卿は、今し方、席を移して、大奥の桂昌院と対談中の頃あいである。その忙しない寸閑を偸んでは、ここに集まって、老中達以下、刻々と内匠頭の処断をすすめていた。

『糺問、相すみました』

多門伝八郎から、内匠頭を調べた結果が、復命される。

上野介の方を糺した、久留十左衛門からも、報告が出る。

若年寄は、それを老中へ。

老中は、目付役の四名をよんで、直接に、再度、不審な点を細かに訊き取る。

そして、側用人まで取次ぐ。

側用人の柳沢出羽守は、老中と将軍家のあいだに立つ。

最後の裁断を綱吉に仰ぐ者は彼であった。

『何分のお沙汰が下るまで、各※(二の字点、1-2-22)、用部屋に控えられい』と、ある。

『はっ……』

罷り退って、老中以下、すべて森のようにしんと坐っていた。