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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页

青空文庫

堂上方の式事は、誰にもせよ、そう弁えているはずもない。例年の御馳走人は、いずれも、高家吉良上野介の指南をうけて、滞りなく、相勤めておる。其許も諸事、上野介におさしずをおうけなさればよい』

重ねて、辞退するのは、失費を惜むかのように思われるであろうと、内匠頭は、

『では、何分共、おひきまわしを仰ぎまする』

と、辞令をうけて、退出した。

同じ朝、同じ饗応役をいいつかったのは、伊予吉田の城主、伊達左京介であった。

左京介も、おうけしたという事を、控え部屋で聞いた。

一代の重任である。内匠頭は帰邸の途中からその事で胸がいっぱいになっていた。然し、年々諸侯の勤めていることだから、自分だけやれない理窟はないし、それに、大きな修業にもなることだ、精励しよう、誠意をもって勤めよう、そう肚はきまった。

そうだ。江戸家老の藤井又左衛門と、安井彦右衛門の二人に、まず計ってみよう。浅野家では先代の長直公も一度この大役をお勤めになっている。その書類などもあろうし、あの老人達ならば、記憶の多少はあるであろうし、いわゆる、年寄の分別もあるはずだ。そう案じたばかりのものでもあるまい。