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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页

青空文庫

六

世間から君子と見られ、また、燈籠の大臣などと称ばれている重盛がいると、入道相国は誰より煙たがるくせに、その重盛が座にいない時は、やはり何か淋しいとみえて、

「あれは独りで何しているか。また、こよいも、堂籠りして経でも誦んでいるかな。それとも、時鳥でも聞いているだろうか。変り者ではあるよ」

などと、宴の半ばにも、自身から問わず語りを洩らしたりするのであった。

六

福原へ行くとさえいえば、一門の公達や女人達は元より、もういい年配の息子たちまで、遊ぶことしか考えていなかったが、入道の肚の内には、兵庫の津からその地方一帯に亙っての、大規模な港を擁した都市計画の設計図が描かれていた。

入道は、以前から、

(もっと海外との交易を盛んにして新しい文化を入れ、自分の栄華を、自分一門のみでなく、庶民の中の繁栄ともさせたい)

と、抱負していた。

宋船との交易を盛んにするには、良い港が必要なので、築港の工事を起し、それと共に、都市の計画にかかったが、彼の設計図には、多分に、政治的な考えも入らずにいなかった。

また平家の恒久的な利益もその中へ織りこまずにいられない入道であった。