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みなもとよりとも
源頼朝
吉川 英治
「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页
三
大軍をまかして、安心できるような老将には、義仲を討つ覇力が足りない。元気に富む若武者ばかりでは、軍令が行われまい。議論倒れになりやすい。旁、京都へ入ってから、義仲の二の舞をやられても困る。
「義経なら……」
頼朝は、知っている、見ぬいている。――あの弟の素質を。
久しく鞍馬や奥州に培われてきた健全な野性と、また、血には、自分と同じ父をもって、よく野性と叡智とを一身に調和している彼の性情を。
「彼ならば、自分の代官として、大軍の上に立たせても、みな服従するだろう」
その点もうなずいていた。
けれど、頼朝もまた、義経を考える時、どうしても義経を一臣下として、考えきれなかった。
わけの分らない感情がからむのである。――あまり義経への衆望が、高まりすぎても困ると思う。彼への服従が、彼への忠誠になったりすると、今、ようやく緒についたばかりの鎌倉に分裂の下地を招くようなものと憂えられてもくる。
そうでなくても東国の武士は感情にうごきやすく激しやすい。単純な所がある。征馬遠く東国から離れて、長い年月、戦場で艱苦を共にし合っているうちには、どうしても、
――死なば共に。