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しんらん
親鸞
吉川 英治
「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页
八
百姓たちは百姓たちと、工匠らは工匠たちと、商人は商人たちと――またその家族たちと――人々はこぞって親鸞の徳を称え、国主の善政に感謝し、法悦の諸声は、天地に盈ちあふれていた。
城主の大内国時も、
「政治のための政治ではいけない――まことの民心をつかむのは、まことの心になって、支配者も、一体になることにあるということを今日わしは教えられた。上人は、仏法最高の真理の把握者であると共に、経世救民のうえからも、共に偉大な民治の父でいらせられる――」と、いった。
相馬の城主高貞や、久下田太郎秀国や、真壁、小栗などの近国の領主たちも、当日の参会によって、みな、少なからぬ感銘をうけていた。
そして、おのおのが、この新しい伽藍へ、応分の寄進を約して、いとも満足げに、やがてそれぞれ帰館の途について行った。
「おまえ様――」お吉は、そっと、良人の手をとって、ささやいた。
「……もう御堂の内には、どなた様もおりませぬぞえ。お式はすんだのでございます。……さ、さ、おまえ様も、階下へ降りて、お上人様へ、まいちどよく、お礼をいうてくださいませ」
「……ウム、ウム」素直な唖のように、平次郎はただうなずくばかりだった。