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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

二

「――平家武者は、さすがに、花武者じゃ、露には咲くが、風には弱うて、よう散るよう散る」

などと、俗歌にまで、謡われて、市民たちにまで、小馬鹿にされ初めてきた。

平家は、あせりだした。迷い出した。――で、彼らは、叡山に使者をたてて、一山の衆僧に、源氏調伏の祈祷をすべく命じた。いつでも、敗者のすがる神仏の力でこの時勢をささえようとした。

二

「源氏調伏」の祈願は、そうして、叡山の日課として、日々、くりかえされていた。

仏燈の油や、壇の費えを惜しまず、誦経、梵鐘の音は、雲にこたえ、谷間にひびいた。

いかなる魔魅も、こういう人間の一念な行には、近よりがたいであろうと思えた。

しかし、行の座にすわる僧たちの心には、今の平家に飽きたらぬものや、不平こそあるが、国家改革の新しい源氏とよぶ勢力に対して、なんの恨みもないのである。調伏の灯は、壇に満ち、誦経に喉は嗄らしていても、それは、職業としてやっているに過ぎなかった。

司権者の命令であるし、近衛摂政からのお沙汰というので、(やらねばなるまい)でやっているお役目であった。形式的な、勤めであった。

その一七日の勤めが終ったので惣持院の学寮に、若い学僧たちが寄り集まって、