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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
家中の者の気性骨には争われない祖父、曾祖父からのものがまだ沁みこんでいる。これがもう御三代も後だったら、よほど稀薄になって居ろうが、まだあるな。それが何であるか知っているか』
『山鹿先生の教えでございましょう』
『素行先生の感化はいう迄もないわさ。しかし、わしが問うているのは、自然の人間に及ぼす感化、土と人間とだ。その素行先生もこの国の人ではない。会津のお方じゃった』
『殿様も、長直公の御代の半までは、常陸の笠間城にいらっしゃいました。私たちの祖父良欽、曾祖父の良勝、みんな常陸から移って来たお方だと聞いています。ですから父は、私を見ると、そちには、関東骨があるの、といつも笑います』
『内蔵助殿は赤穂で生れたが、あの仁にしてからが、既に関東骨をそなえている。上方から西は天産に富み、風光はよし、文化もひらけ、従って遊惰に流れる風も多分にあるが、智恵の光が人間を磨いておる。常陸はずんと風もあらい、地も粗い、人も荒削りじゃが、剛毅というやつが骨太に坐っておる。こう二つのものの中庸を行って、よく飽和しているのが大石大夫の人がらじゃと、わしは思うが』
主税は、どうして良雪和尚が、永年親しくしている父に対して急にそんな仔細な眼で見たり性格を分解してみたりしようとしているのか、その気持を薄々知ることができた。