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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
『所詮、大石殿の動くのを待っていては、十年先か、二十年先か、或は、心底から復讐の意などはないかも分りませぬぞ』
『ただ惧れるのは、上野介が、米沢の城中に深く隠れてしもうたら最後――と云う心配だ。わしも、それを思うと、居ても起っても居られぬ心地がする』
『お腰をあげられい』
『どうする?』
『まず、京都へ参って、もう一応、大石殿へぶつかってみましょう』
『ふム』
『飽くまで、煮えきらぬ態度なら、もう心底は知れたこと。あのような人は見すてて、我々のみで――』
『と云うと……誰と、誰?』
『京阪では、大高、潮田、中村勘助、こう三名は元よりの大丈夫。岡野、小野寺のせがれも二心はござるまい。江戸には堀部父子、奥田孫太夫、田中貞四郎、倉橋伝助、これ等はたしかに同心の者』
『まず、十二、三名はあるかな』
『ござりますとも。卑怯者の百名よりも鉄心石腸の十名もそろえば』
『待て』
数右衛門の昂ぶる言葉を抑えて、
『ともかくもじゃ、京都までぶらりと行って、大夫の心底をたしかめ、かたがた、急策を立てるとしよう……だが、生憎じゃの』
と、家へ上って、
『うちの女房が、きょうは住吉の縁家までまいって留守じゃ。