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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
『浅野内匠頭の家来、亡君のあだを報ぜんがため、推参申したりっ』
『吉良どのは、何処におわすか!』
『疾う疾うお出合いなされて、潔く、御首を賜われかし』
『末代、汚き名を遺したもうか!』
『吉良どの! 上野介どの』
『内匠頭の家来ども見参』
彼方此方に、こう駈け廻りつつ叫ぶ声が、夜叉の襲来のようであった。――若い声、しゃがれた声、憤り声。
小野寺十内の子、幸右衛門は鬢髪を振り乱して働いていた。近習部屋からガバと起きて、
『推参ッ』
と、押っ取り刀で向って来た三名の侍に取り囲まれ、半死になって渡り合った。
『あやうし!』
と見た大高源吾は、書院から驀しぐらに助けに来た――。何者とも分らなかったが、その途中、襖の蔭から、
『退れっ! 曲者っ』
豹のように躍りかかって来た刃がある。源吾は、
『なにっ』
向き直ると、炬のような眼をして、大太刀を振りかぶった。
口ほどもなく、その男は横っ跳びに廊下のほうへ逃げ出したが、途端に、赤穂の者の槍の穂に刎ね上げられて、縁先から外へ抛り捨てられていた。
源吾のすがたを見ると、幸右衛門を囲んでいたうちの二人は逃げた。その一人は、追いかけて、源吾が斬り下げた。