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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
厚く凍っている大地の雪の冷たさが、素足の裏から頭のしんへ突き抜けてくる。
雪ばかりか、外には、月も冴えていた。早くも大玄関は打ち破られ、書院の大戸を、掛矢で打ち破っている人影が見える。
点々と、邸の中を、雪の中を、夜鴉のように疾駆している黒い人影と刃影――一学は見た途端に総毛立った。
『うぬっ。寝込みへ来たな。御首級はやれぬ、この一学のあるうちは』
植込みを潜って、一学は、上野介の寝所のほうへ急ぎかけた。――そこには十分な要害もあるし、宿直の備えもあるので、万が一にも、まだ不吉なことはない筈とは思うのであったが、もう胸は早鐘を撞いている。何としても、大殿と嫡子の安否が気づかわれる。
綿のように厚ぼったい梢の雪が、ぼたぼたと裲襠の肩へ落ちては散った。
と――その艶やかな被衣に似げない敏捷さを不審かって、
『待てっ』
樹蔭から半弓を持った赤穂浪士の一人が駈けて来た。
(怪し!)
と見たので、弓弦につがえている矢をしぼって、ひょうと射て放すと、矢は裲襠の袂に止まって、風鳥のように、その影は、築山へ駈けのぼって行く。
『おのれっ』
半弓を捨てて、一方は追い慕い、