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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页

青空文庫

だが、その火影はすぐ消えて、真っ暗な家毎の窓や裏口から、わらわらと人影が外へ散って出た。

長太刀を持った奥田貞右衛門、千葉三郎兵衛、間瀬孫九郎、中村勘助などの人々は、外にあって、襲いかかる敵に当り、もうそこ此処には、槍が走り、刃が飛び、あたりの雪は、泥か血か、滅茶滅茶に踏みにじられては、乱戦を展げて行く。

『隠居所へ。――奥の寝所へ』

主税の声が、どこかで聞えた。

かねて手に入れて、各※(二の字点、1-2-22)が頭脳におさめている吉良家の絵図面は、今こそ生きて役立っていた。この裏門口は、表玄関からかかるよりも、直接、上野介の隠居所である一囲いに近いのである。

『浅野浪人、亡君の御無念ばらしに推参』

『吉良殿の御首級を頂戴に参ったり』

『われと思わん方々は、出合いたまえ』

『見参っ』

『見参』

打ちやぶる内玄関の戸。

書院の雨戸。

窓。

台所口。

槍は切りつめて誰の手にあるのも九尺であった。堀部安兵衛は大太刀を、菅谷半之丞はつかい馴れた小太刀を――そのほか屋内へ雪崩れ入った者はおよそ十名ほどであった。

この折の光景を――小野寺十内老人が、後に故郷の老妻へ書いて送った手紙に、