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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页

青空文庫

『ウウム――』

と、最後の一息を結ぶまで、戦闘をやめなかった。

三人が、ほッと肩で息をついた程だった。――と共に、何かよほど手強い大物に当ったようなつかれが体を襲ったので、

『こうしては居られぬぞ、吉良上野介のありかは何うしたか。――まだ合図の笛も鳴らぬ。それッ、目ざす怨敵へ』

雪をつかんで一口喉を濡らし、不破も奥田も木村も、土足の痕の上へ土足をかさねて、隠居所の内へ雪崩れ入って行く。

その頃、家中の者との戦闘は、およそ激しい絶頂を越えかけていた。そして喘ぎ喘ぎ自から、

『仇は、仇は』

『吉良父子は』

『何処へ』

『吉良をさがせ』

と口々に云う声が、血眼の中を駈けあるいて、彼方此方に、家探しが始まっていた。

一代家来

――いや、激闘はまだ終局とは云えない。

大書院の廊下を境にして、先刻から、鎬を削り交わしている一組がある。

ここに見える者は、横肥りで顔の丸っこい若者で、その逞しい体つきは、浅野家の煙硝御番役、横川勘平とはすぐわかる。

勘平は初めから刀。

体にふさわしい大太刀だった。

もう一人は、富森助右衛門、十文字槍の上手である。こよいの武器も、勿論得意とするそれ。