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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
刑にすれば主君の内匠頭以上に重いだろうと観る者もある。――ここんところ、幕府のお裁きが何うなるか、下手をすると、諸侯や学者や役人衆のあいだばかりでなく、町人百姓までが、さだめし囂々と蔭口きいたり、又、口の悪い落首が諸所に現われるだろうと』
『ウム、見ものだなあ』
『このお裁き一つに依って、忠義というものの真体が定義されるんだから、武士道というものがあって立っている諸大名は勿論、幕府自身だって、迂濶には処分できまい』
『おう……永代橋だ。やっと、本所の空が見えて来た』
『まだちょっとあるな。何しろ、人間の首というものは重い、河岸は人通りもないから、その杖に差して、両持ちにして行こうじゃないか』
『よしよし、こうか』
風呂敷包の結びへ、竹の杖をさして、二人は両端を持った。
泉岳寺の寺僧で、一人は一呑といい、一人は石獅という者だった。
吉良家の菩提寺の万昌寺から、寺社奉行を通じて、
(上野介様のお首を渡してもらいたい)
と云う交渉があったので、あのまま寺中に預かっておいた上野介の首を、吉良家へ届けに行くようにと、住職から申し附かって、こう二人で、これから本所の松坂町まで行く途中なのであった。