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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页

青空文庫

『うむ、よく分った』

大きく、頷いて云った。

『――御老中へ、そちの意見、取次いでとらせる。暫時、相待て』

二人は、出て行った。

だが、すぐ戻って来て、

『伝八郎、そちの気持はよう分るが、御老中のお力にも及ばぬとの事だ。お取次ぎしてみた所で、無益らしいと申される』

伝八郎は、膝をにじり出して、

『上様の思召であり、御老中の評決とあらば、是非に及ばぬ事です。然し、その間に、何人かの御一存で決着いたしましたものとすれば、正しい御政道とは申されませぬ。外様衆の存じ寄りも如何かと思われますし、世上も、奇怪に考えましょう。諄いようで、畏れ入りますが、伝八郎事、強って申し張って、うごかぬ由を、いまいちど、御進言ねがいまする』

先刻のつよい語気ではない代りに、諄々と、正義を主張して、正義の為には、食禄を賭しても――という覚悟のほどが、静かなことばの裡に見えていた。

『左程までに申すならば……』

と、若年寄の二人は、再び起って、御用部屋へ、その旨を伝えた。

老中たちのうちでも、伝八郎の説に、

(至極――)

と感動していた者もあるので、

『彼の申し条も、理のある事、この上は、やむを得まい』