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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

救いの師、親鸞に名づけられて、きょうから在家の弟子となった自分の名を――。

お吉も、共に、

「よい名でござります」と、よろこびにかがやく。平次郎は、改まって、

「お吉よ」と、やさしく呼んだ。

「あい」

「おまえのお蔭だ、おれがこうなって生れかわったのは――」

「勿体ない」

「二つにはまた、死んだ児のおかげだ。――こうして、御仏に導かれる縁を作ってくれたのは」

「ほんに……」

「また、仲ようして、よい子を生もう、お吉、生んでくれ」

「はい」

「そして、きのうまで、おれのしたことはすべて忘れてくれ。――きょうからは、生れかわった唯円房、きっと、人いちばい働いて、貧乏も取り返すぞ、おまえにさせた苦労も埋め合せしてやるぞ」

「そのおことばだけで、私はもう、なんといってよいか分りません。……私も、きょうの暁、いちど死んだも同じ体です。これからは、唱名一念、夫婦して、御仏さまへおつとめをいたしましょう」

「オオ、お上人様が手ずから植えて――やがてあの御堂の両側に伸びてゆく――柳と菩提樹のようにな」

*

九条殿の執奏によって、弟子の真仏房がはるばる、都から奉じてきた、後堀河の帝の勅額は――