Japanische Klassiker mit Furigana
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しんらん
親鸞
吉川 英治
Lesen Sie 親鸞 (しんらん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 566.138 Zeichen · 1127 Bildschirme
逃げ損ねた者が二、三人、異様な声をあげて横たわった。折も折、彼らが二町も後ろに置き捨ててきた輦のあたりから、姫の声にまちがいない帛を裂くような悲鳴が流れてきた。それにも狼狽したであろうし、四郎の暴れまわる殺気にも胆を消したとみえ、侍たちは、足も地につかないでいずこへか逃げてしまった。
死骸の衣服で、ぐいぐいと刀の血をふきしごいて四郎は、肩のこりでもほぐしたように、両手の拳をたかく空へあげ、
「はははは」何がおかしいのか独りで笑った。
するとそこへ、河童頭の侏儒に似た小男が駈けてきて、
「親分」
「蜘蛛か、どうした?」
「うまくゆきました」
「女は」
「ひっかついで、この道は、人に会うといけないから、並木のうしろの畑道を駈けてきます」
「そうか」跳ぶが如く、堤を一つこえて、畑のほうを見ていると、蜘蛛太のことばのように、一かたまりの人影が、輿でもかつぐように、肩と肩とを寄せ合って、堤と畑とのあいだを、いっさんに駈けてくる。
黙って、四郎も走る、蜘蛛太も走る、そして、四、五町も来るとようやく安心したもののように息をやすめて、
「おい、一度下ろせ」と四郎がいった。
露をもった草の上に、ふさふさとした黒髪と、五つ衣の裳を流した、まだうら若い姫の顔がそっと横に寝かされた。