Japanische Klassiker mit Furigana
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しんらん
親鸞
吉川 英治
Lesen Sie 親鸞 (しんらん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 566.138 Zeichen · 1127 Bildschirme
五
それを脱ぎかえて、草庵の裏の川へ、洗い物をしに出たのである。
吉田の崗から白河へ落ちてゆくそこの流れも、冬のうちは氷が張りつめていて、なにをするにも、手の切れるような冷たさであったが、もう水も温んで、春の樹洩れ陽は衣を洗う彼女の白い手に傷々しくなくこぼれている。
小袖についていた血の汚染は、はやい瀬の水に淡い脂をひろげてすぐ消えて行った。
「今朝は、どんな容態であろうか」彼女は、今も、怪我人の生命がふと気がかりになっていた。――それと共に、社会の浄土化を願う以外に使命のないはずである僧門の同士が、こういう生々しい鮮血をながして、争わなければならない理由がわからなかった。
僧門のうちだけは、すくなくとも、闘争や陥穽の実社会とはちがって、浄く、気高く、和気藹々として生活の楽しめる世界であろう――と彼女は善信に嫁ぐ日まで信じていたのである。
嫁いだ翌日から、その想像は裏切られ、僧門の世界も社会の一部でしかないことを、彼女は、事ごとに見せつけられてきた。それを悲しんでいれば、毎日が悲しみでなければならないほどに――
だが、つらつら考えてみると、自分自身ですら、決して、新妻でありまた菩薩であることはできにくいことであった。