Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんらん

親鸞

吉川 英治

Lesen Sie 親鸞 (しんらん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 566.138 Zeichen · 1127 Bildschirme

Aozora Bunko

脱走

一

十一月の大地は凍てきっていた。夜霜はその珠のような足を刺す。しかし、ふたりはその痛さも冷たさも覚えないもののようであった。

「あっ……松虫さま」

「どうしました?」

「何か踏んで……」

「え、踏んで?」

「芒の根です」

「まあ、血が――」と松虫は、鈴虫の足もとへ身をかがめて、布を裂いた。

自分の肩にすがらせて、彼女は年下の鈴虫の足を布で縛ってやる、布は血ですぐに紅くなった。

「すみません」鈴虫は、涙ぐんで、

「――勿体ない」と何度もいった。

「なんの、お互いです」跛行をひいて歩く鈴虫の腕を抱えて、二人は糺の森をいそいだ。

樹蔭に入ると、真暗だった。いつもなら、松明にかこまれても怖くて通れそうもない道である。それが、少しも意識にならないばかりか、大きな光明が彼方に見える気持すらするのである。

友の腕を授けてやったり、凍てた大地に血をこぼして歩くだけでも、二人は、何かしら充ち足りてくる生命のよろこびを感じるのだった。急激に生きている身であることを全身で知ってくるのだった。

森を出ると、狐色の枯れすすきに、細い月影が一すじの小道を見せている。道はだんだん登りになる。やがて、鹿ヶ谷は近いのであった。