Japanische Klassiker mit Furigana
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しんらん
親鸞
吉川 英治
Lesen Sie 親鸞 (しんらん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 566.138 Zeichen · 1127 Bildschirme
火と火
一
誰も、それを怪しみはしなかった。むしろ常々ここへ詣でる人々は、
(こういう薬は)とか、
(手製りの甘い物を)とかいって、何か見舞を携えてきて、病人に上げてくれと置いて行った。その度に、
「住蓮……」
「安楽房……」
二人は、顔を見あわせて、自責にたえない眉を見合った。
「ああいう善良な人たちを、わしとお身は、あざむいているのだ。――仮病とは知らない信者たちは、見ていると、一刻もはやく御病気が癒えますようにと、御本堂で祈念をこめて帰って行きなさる。――あれを見ていると、たまらないほど苦しい」安楽房は、重い息をついて、山荘の奥でうつ向いた。
沈黙していると、二人の胸には、今さら、悔いがのぼってきた。――あの松虫の局と鈴虫の局さえここに匿わなければと。
だが、一日ましに、事情が苦しくなるほど、一日ましに、二人は、あの匿い人をふり捨てる気になれなかった。
「おれたちは、邪道に落ちているぞ――」と、ある時は、住蓮が告白した。
「なぜ」
「ようく自分の胸に手を当てて考えてみることだ、いつの間にか、お身のことは知らないが、わしは鈴虫の局に恋をしているらしい。……鈴虫の局の眼がものをいう。