Japanische Klassiker mit Furigana
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しんらん
親鸞
吉川 英治
Lesen Sie 親鸞 (しんらん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 566.138 Zeichen · 1127 Bildschirme
五
六角堂のすぐ裏にあたる修学院の池である。
そこに、この真夜中、水音がしていた。裸体になって水垢離をとっている者がある。白い肌がやがて寒烈な泉に身を浄めて上がってきた。
範宴だった。寒いといっても、このごろはもう樹の梢にも霜がないが、彼がこの六角堂の参籠を思い立った一月上旬のころには、この池には夜ごとに薄氷が張っていたものであった。その氷を破って全身を八寒のうちに没して、あらゆる妄念を洗って後、御堂の床に着くのだった。
――それが今宵で九十九夜も続いた。よくこの肉体がつづいたと彼は今も思う。
しかし、行は、行のための行ではない。出離生死の妄迷を出て彼岸の光明にふれたい大願に他ならない。九十九夜の精進が果たして仏の御心にかなったろうか。
凍える身を拭いて、範宴は白い浄衣を肌に着、少僧都の法衣を上に纒った。そして、六角堂の扉を排しながらはっと思った。
「百夜はおろか、二百夜、千夜、出離の御功力をたまわるまでは、振り向いてはならぬ。まだ真向にこの御扉のうちへこそ向え」
自分を叱咤して、精舎の扉を排した。
床に坐る。一点の御灯を霊壇の奥に仰ぐ。――範宴は、ここに趺坐すると、弱い心も、強い心も、すべての我が溶けてくるのを感じる。