Japanische Klassiker mit Furigana
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しんらん
親鸞
吉川 英治
Lesen Sie 親鸞 (しんらん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 566.138 Zeichen · 1127 Bildschirme
二
こういう現象は、つい七日ほどまえの夜からであった。あの夜以来、範宴の眸にも、心にも、常に一人の佳人が棲んでいた。追おうとしても、消そうとしても、佳人はそこから去らなかった。そしてある時は夢の中にまで忍び入って、範宴の肉体を夜もすがら悩ますのであった。
二
一日ごとに春は熟れてくる。
範宴は狂わしい眼で外を見た。聖光院の庭は絢爛な刺繍のようだった。連翹のまっ黄いろな花が眸に痛い気がする。木蓮の花の白い女の肌にも似た姿が意地わるい媚のように彼には見えた。
何を見ても触れても、甘酸っぱい春の蜜を湛えている自然である。蜂も、鳥も、猫も、恋をしていた。
(人間もその自然の下にあるものなのに)範宴は自分に宿命した自分の秘密を、時には、不幸な胎児のように不愍に思うことがあった。
絶対に、この世の光を浴みさせることのできない秘密の胎児――生れでる約束をもたずに出命した暗闇の希望――こういう煩悶に彼は打ち勝とうとすればするほど人格の根柢から崩されてしまうのだった。
「玉日……」思わず口の裡でこう呼んでみて、せめてもの心遣りにすることすらあった。熱い息の中で、
「玉日……」