Japanische Klassiker mit Furigana
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しんらん
親鸞
吉川 英治
Lesen Sie 親鸞 (しんらん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 566.138 Zeichen · 1127 Bildschirme
すると、煙の裡に、泣きさけぶ嬰児の声が聞えた。見ると、年景の妻が、幼子の手をひいて、発狂したように、炎へ向って、なにかさけんでいるのだった。
五
生信房のすがたを見ると、
「――助けてくださいっ」年景の妻は、しがみついた。ふところの乳のみ子が泣く、手をつないでいる数名の子たちも泣く。
「……あれっ、あの棟の奥の部屋に、まだ一人、逃げおくれた和子が、母の名を呼んでいます。あれ、影が見えるっ……。どうしようぞ……和子がようっ……和子よう……」半狂乱になっている彼女なのである、乳ぶさの子も、袂にしがみついている子たちも、みな振りすてて一人の子を救うために、紅蓮のうちへ駈けこみそうにも見える血相だった。
「だいじょうぶです」生信房は、彼女の肩をつかまえていった。
「あの棟にはまだ、火がまわっていないらしい。私が、抱いてきてあげる」ことばと共に、生信房は、焔のうちへすすんで行った。年景の妻は、
「おおっ、御仏っ」泣いてさけんだ、焔へ向っても狂わしいほど感謝した。まったく、赫光の大紅蓮のうちに見える生信房の男々しい働きは、生ける御仏としか見えなかった。
やがて、生信房は、法衣のすそも袂も焦された姿で、三歳ばかりの幼子を引っ抱えて駈け戻ってきた。