Japanische Klassiker mit Furigana
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しんらん
親鸞
吉川 英治
Lesen Sie 親鸞 (しんらん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 566.138 Zeichen · 1127 Bildschirme
八
――範宴さまが、案じておいでになるだろう」後を見まいとするように、登って行く。
中堂のあたりには、夕べの灯がついていた。もう、僧正の勤行も終った時刻である。
使いの返書を、執務の僧にわたして、性善坊は、宿房の方へ、曲がって行った。範宴が佇んでいた。
「帰ったか」
「ただいまもどりました」
「おそかったのう」
「ちと、道に迷いましたので」性善坊は、途中の出来事を話さなかった。範宴にいえば、範宴は、師の僧正の難をおそれてきっと、入壇を拒むだろう。
(だが、困ったものだ)と、彼は一人で案じていた。法燈の山も、なかなかうるさい。暗闘、嫉妬、愛憎、毀誉、人間のもつあらゆる葛藤はここにもある。
八
(そっと、座主のお耳に入れておこうか。――いやいや、座主には、何か、お考えもお覚悟もあって、なされたことに違いはない)性善坊は、思い悩んだ。
朝の厨の用意を、夜のうちにしておいて、ぼんやりと、院の外へ、あるきだした。
水っぽい春の月が、峰よりも低いところに、いくらか、黄いろ味をもって懸かっていた。
「山も山だが、下の巷は、なおさらだろう」
喘ぐ人間社会の息が、月を黄いろくしているように思えた。