Japanische Klassiker mit Furigana
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しんらん
親鸞
吉川 英治
Lesen Sie 親鸞 (しんらん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 566.138 Zeichen · 1127 Bildschirme
」この夜半すぎに聖光院を捨ててそもいずこへ走ろうとするのか、範宴の身にはすでに聖光院門跡の纒う綾の法衣や金襴は一切着いていなかった、一笠一杖の寒々とした雲水のすがたであった。
そうして聖光院を捨てて出た彼の心は、性善坊だけには、いい残してきた。彼にはすべての秘密もうちあけて――また後々のこともたのんで。
木幡民部と覚明には、遺書を認めておいて来たのである、どんなに彼らは後で驚くだろう、悲しむだろう、しかしそういう目前の感情は、範宴の今の大きな覚悟のまえにはあまりに小さい問題だ、もっともっと大きなものすら踏み越えてゆく決心なのだ、女々しくてはこれからの万難の一つも越えられまいと、自身を叱って自身の心をかたく鎧う。
「そうだ、夜の明けない間に――」歩み出そうとすると、彼の法衣のすそを引くものがあった、大きな黒い犬である。
「しっ」範宴は追い払って駈けた。
犬は、寝しずまっている世間へ告げるように吠えたてる。彼は、犬の声にすら趁われるような気持がした。
まだ暗い加茂の瀬にそって、彼は足のつづくかぎり急いだ。幸いにも、京の町では誰にも咎められなかった。そしてやがて、息を喘いて上ってゆくのは叡山の麓だった。